[ J3R COLUMN SHIFT ]
1964年式J3Rを、コラムシフトに改造したレポートです。
《どうしてコラムシフト?》
私がこのJ3Rを入手して、レストアをしながら不思議に思ったことがありました。
それは、インパネのステアリングシャフト上部になぜか切り込みがあったことです。
これはJ3Rの初期型のみの特徴なようで、40年代前半には、もうこの切り込みはなくなっています。
J20系、30系のジープは、大多数がコラムシフトです。そのコラムシフトのジープを見たとき、
その切り込みが、コラムシフトのロッドを通すための逃げだということがわかりました。
でもなぜJ3Rに切り込みがあるのか? J3Rにはコラムシフトの設定はないはずなのに・・・
そんな疑問が湧いてくるとともに、「このJ3Rをボディーなどの加工なしにコラムシフトに改造
できるのではないか」という考えが浮かんできたのです。
もともとコラムシフトの雰囲気やフィーリングが好きだったため、真剣にコラムシフト化を考えるようになりました。
《コラムシフトの利点は?》
J30系のジープなどで、コラムシフトをフロアシフトに改造した例は聞いたことがあります。
しかし、その逆の例は聞いたことがありません。コラムシフトとフロアシフトの操作性を比較した場合、
当然シフトフィーリングがよいのはフロアシフトです。特にジープのミッションの、ダイレクトに
「カチッ」と決まる感触は大変気持ちのよいものです。
コラムシフトでは、ロッドやリンクを通してシフトチェンジをするため、さすがに「カチッ」という
感覚は望めません。また遊びが多いため、ギヤの入りが悪くなることもあります。現在ミニバンなどで
流行っている、AT(オートマ)のコラムシフトならあまり問題がないのでしょうが・・・
ではコラムシフトに改造する利点はあるのでしょうか? いやあるのです。まずシフトチェンジの際に、
ステアリングホイールとシフトレバーが近いため、左手の移動距離が少なくて済むという点です。
また、私のJ3Rは3速ミッションのため、リバースを含めシフトポジションが4つしかありません。
従って多少遊びのあるコラムシフトでも、シフトチェンジがやりやすいということです。
4速コラムシフトのジープを、レバーの部分だけ換えてフロアシフトに改造すると、シフトパターンが
変わってしまうという話を聞いたことがあります。どうやら4速の場合、フロアシフトとコラムシフトの
シフトパターンが違うことに原因があるようです。3速の場合は、コラムシフト車の場合、フロアシフトの
パターンをそのままコラムに持ってきただけなので、そういった問題はありませんでした。
《本当に改造は可能なのか?》
まずは部品取り車を探しました。運良く、実走3万2千キロの、43年式J20が見つかりました。
下調べをしてみると、ミッションさえ積み替えれば、一切の加工なしのボルトオンで改造できそうな
感じでした。
ただ、できればステアリングホイールも、ホーンリング付き2本スポークのものに換えたかった
ので、ステアリングシャフトが互換性があるのかどうかが不安でした。
そこで、HP上で意見やアドバイスを何人かの方からいただだきました。しかし完全な結論は出ません
でした。自分なりに検討した結果、とにかく部品を入手し、改造に着手しようという結論を出しました。
《コラムシフト化に着手》
やっと部品が入手できました。しかし早速問題が起きました。ステアリングギヤボックス・シャフト
の形状や、シャーシに取り付けるボルトの位置も全く違うことがわかりました。仕方なく2本スポーク
ステアリングの装着はあきらめることにしました。
とりあえず、ステアリングシャフトに取り付けるシフトレバーやロッド、リンク類を分解し、OHして
組み付けました。取り付けの位置を合わすのには苦労しましたが、うまく取り付けることができました。
そして近所の整備工場に、J3Rとコラム用ミッションを持ち込み、ミッションの載せ換えをして
もらうことにしました。ところが、コラム用のミッションのカバーを開けてみると・・・ ショック!!
なんとギヤが欠けてしまっていてひどい状態でした。実走3万2千キロの車だったのに・・・
そこで、もともとJ3Rについていたフロア用ミッションは、そのまま保存しておくつもりだったので
すが、やむなくその中身をすべて、コラム用のギヤケースに移植することにしました。ついでなので
ベアリングやシール類もすべて新品を取り寄せ(部品はすべて揃いました)交換してもらい、結局
フルOHしたミッションとなりました。
次はトランスファです。フロアシフト用は2本レバー、コラムシフト用は1本レバーとなっています。
どちらでも装着できるということなので、せっかくコラムシフトにしたのだから、1本レバータイプを選択
することにしました。ミッションとトランスファが結合し、J3Rに積み込まれました。作業は順調に進
んでいましたが、もう少しのところでトラブルが発生しました。
クラッチペダルとクラッチワイヤとの仲立ちをしている「カウンターシャフト」が、J3R用もJ20用
もどちらも合わないと言う事態が起こってしまったのです。どうやらトランスファを1本レバータイプとした
ことに原因があるらしいのです。1本レバー・コラムシフトのJ20系についていたタイプは、シャフトの長
さは合うが、リンクの長さが長すぎて合わない(おそらくJ20系ではクラッチペダル側のリンクがJ3Rの
ものよりも長いと思われる)。そしてJ3Rのものでは、そのまま使おうとするとトランスファケースに干渉
してしまい、シャフトを少し短くしないと付かない(おそらく1本レバータイプのトランスファの方が、レバ
ーケース部分の突起量が大きいと思われる)。というわけで、その状況を工場の人から説明を受け、これから
またトランスファとミッションを降ろして2本レバータイプにもどすか、J20系用のクラッチリンク関係を
そっくり移植するか、またはカウンターシャフトを加工して合うものを製作してもらうかということになった。
これからまた載せ換えるのは大変なことだし、J20系のクラッチリンクのパーツは手元にはないし、時間もな
いので、結局近所の鉄工所で加工製作してもらって対応することにしました。すぐに加工は終わり、無事組み
付けることができ、ついに完成することができました。
《運転フィーリング》
さて、完成した日本に1台? のJ3Rコラムシフト。すっかり自己満足です。
実際に運転してみると、予想以上にフィーリングがよく、ハンドルからわずかに左手を移動させるだけで
スムーズにシフトチェンジができる。シフトポジションが、そのまま上下に動かすとそれぞれ「セカンド」・
「サード」、奥に押し込んで上が「リバース」、下が「ロー」と大変使いやすいのです。チェンジもスムーズ
に入り、とにかくオンロードを走る分には、むしろフロアシフトよりもいい感じで、自分としてはとても満足
できる車に仕上がりました。その後、エンジンOHと同時にフルシンクロ化したので、更に操作性は向上しま
した。詳しくは「メンテナンスの部屋」で。
《2000年度 北海道クラシックカーフェスティバル》
北海道クラシックカーフェスティバルには、過去に何回も参加しています。以前までは1961年式
CJ3Bで参加していたのですが、この年にはJ3Rを初めて出品するため、このコラムシフト改造や最終調整を
進めてきました。ぎりぎりの出発日前日にすべてが完成し、会場まで片道200kmの自走も絶好調でした。
会場では予想以上の反響があり、うれしい限りでした。ただあまりにも自然に収まっているコラムシフト
に気づかない人が多く、またコラムシフトと解っても、昔のジープはこうなっているものなんだと思って見て
いる人も多くいました。
多くのジープ仲間とも再会し、最後には、このレストアが認められ、「ベスト・オブ・三菱」という
賞をいただき、もう感激でした。帰りは、天候もよかったので、フルオープンでコラムシフトのフィーリ
ングとハリケーンサウンドに酔いながら、最高のドライブとなりました。
《幌骨の収納》
ジープの民間用純正幌の脱着の面倒なことは、よく知られています。それでもう1台所有のCJ3Bは、
民間型オリジナルに仕上げたのにもかかわらず、幌は軍用タイプを使用しています。軍用幌は民間用に比べ、
はるかに脱着が簡単です。しかし、このJ3Rはボディーの加工を一切したくなかったので、幌も純正に
こだわりました。
さらにこの純正幌は、20本以上のボルトをはずしてやっとオープンになったと思ったら、今度は大量にある幌骨の
収納場所に困ってしまいます。
これだけレストアしたジープの荷台に、無造作に幌骨を置いてしまっては、走行中に転がってキズ
だらけになってしまいます。
そこで、もとはダンボールで製作していたのですが、幌骨をうまく収納できるようにまず荷室に人工芝を敷き、木枠をつくって幌骨をうまくできるようにしました。
たたんだ幌やドアなどはその上に置くようにすることができます。いずれにしても脱着にかかる手間と時間だけはどうしようもないのですが・・・